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コロナ禍の中、いまや不確実や不安定や異常なことが社会の新しい状態(New Normal)となりつつあります。このような状況で、企業に必要とされるのは、「変化対応的な自己変革能力」つまり「ダイナミック・ケイパビリティ」だといわれています。今日、日本企業は、「働き方改革」の名のもとに、欧米流の経営へとシフトすることが要請されていますが、ダイナミック・ケイパビリティ論によると、むしろ従来の日本的な経営の方が優れているように思います。
本講座では、世界最先端の経営学といわれているダイナミック・ケイパビリティ論について説明し、不確実で不安定な状況でどのようにして日本企業の強みを活かすことができるのかを解説してみたいと思います。
日本の強み1
「柔軟な組織」が変化対応を可能にする
日本企業はこれまで総合職、一般職、その他という大まかで柔軟な組織によって不確実に対応してきた。環境や状況が激しく変化する中で、危機を敏感に感知し、適切なタイミングで組織を再編成して新たな組織への変容を実現するには、この「柔軟な組織」が強みとなる。
日本の強み2
「人間中心主義」で自己変革を促す
長年日本企業は現場で出てきた想定できない暗黙知を活かすことで、高品質の製品やきめ細かいサービスを実現し、世界をリードしてきた。昨今、デジタル化に伴い形式知への転換が迫られている中で、この「人間の暗黙知」を取り込むことがダイナミック・ケイパビリティの発揮ひいてはイノベーションにつながる。
日本の強み3
「攻めのガバナンス」が価値を高める
90年代以降に受け入れてきた株主利益最大化を目的とする経営パラダイムではなく、かつての日本企業が実践していた従業員中心の多様なステークホルダー論に基づく経営には、ダイナミック・ケイパビリティとの親和性がある。
講師による講義と、事前課題の共有・ディスカッションを中心に進めます。事前課題は各回の設問にしたがってできるところまでで結構ですのでご自分なりに考えをまとめてみてください。講師からのフィードバックやクラスディスカッションでより考えを深めます。
agoraメンバーシップは講座参加費の割引と講演会の受講券がセットになったお得な制度です。詳しい内容はこちらをご覧ください。
4月24日(土)14:00-17:00
戦略経営論、企業境界論、起業家論
ダイナミック・ケイパビリティ論は戦略経営論の系譜、企業境界問題の系譜、起業家論の系譜といった3つのルーツを持っています。ダイナミック・ケイパビリティ論がどのようにして登場してきたのか、これら3つのルーツを辿ります。
5月8日(土)14:00-17:00
パラダイムの不条理とその解決
日本人が陥りやすい失敗として「パラダイムの不条理」と呼びうる現象について、T.S.クーンのパラダイム論を利用して説明します。そして「パラダイムの不条理」の解決案の一つとしてダイナミック・ケイパビリティ論が有効であることを解説します。
5月22日(土)14:00-17:00
閉ざされた組織文化か、開かれた組織文化か
環境の変化に対応して企業のダイナミック・ケイパビリティが有効に働くには、自己正当化主義的な「閉ざされた組織文化」ではなく、K.R.ポパーが主張するような批判的で「開かれた組織文化」が必要であることを説明します。
6月12日(土)14:00-17:00
堅固な組織か、柔軟な組織か
今日、働き方改革のもとに欧米型の同一職務同一賃金制度(ジョブ型雇用)の導入が日本企業に求められています。しかし、環境が変化する状況で企業のダイナミック・ケイパビリティを有効に働かせるには、日本的な総合職ベースの組織(メンバーシップ型雇用)の方が効果的なのです。このことを、日米独の組織構造や社会構造の違いに言及しながら解説します。
6月26日(土)14:00-17:00
ロボット中心か、人間中心か
環境が絶えず変化する状況でダイナミック・ケイパビリティを有効に働かせるには、企業のデジタル化が効果的です。特に、デジタル・トランスフォーメーションの最先端に位置するデジタルツインについて日米独の思想の違いを説明し、ロボット中心の欧米思想よりも日本的な人間中心思想の方が有力であることを解説します。
7月10日(土)14:00-17:00
社外取締中心か、社内取締中心か
今日コーポレート・ガバナンス改革のもと、経営者の不正によって企業価値を減少させないために、日本では守りのガバナンスが重視され、米国流に社外取締役の比率を高めるべきだと言われています。しかしダイナミック・ケイパビリティ論からすると、企業価値を高める攻めのガバナンスの方がより重要であり、それゆえ日本的な社内取締役の比率が高い方が良いことを解説します。
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