菊澤研宗さんと考える【セルフガバナンスとしての経営哲学】
損得計算を越えた判断の拠りどころを考える
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利益の獲得だけを考える経済合理的な経営では、企業はときに合理的に不正を犯し、合理的に失敗をします。この不条理を回避するには、経営者が自らを律し統治する、判断の拠りどころとしての「経営哲学」が必要です。本講座では、国内外の思想家・経営者・学者の思考をたどりながら、組織や個人がセルフガバナンス(自己統治)を実現するための経営哲学を考えます。
「企業理念」と「経営哲学」の違いについて
「企業理念」は、企業全体のあり方にかかわるものであり、それゆえに“主体なき無責任体制”にもつながるリスクを抱えています。一方、「経営哲学」は、経営者個人が自らを律し、価値判断の基軸とするもので、“利益以上に重要なことは何か”、“自分にはそれがあるかどうか”を自らに問いかけるものです。
おすすめする方
- 経営哲学を深く思索し、議論したい方
- 経済・経営学・社会思想に関わる古典への知見を広げたい方
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講座内容
4月27日(土)14:00-17:00
第1回松下幸之助にみる不条理の克服
セルフガバナンスの成功例として、松下幸之助の経営哲学を考える。彼は、顧客のニーズに応えるのではなく、自らの理想とする社会を実現するための「水道哲学」を提唱した。彼の思想と実践を通して、経済合理主義的経営の限界と、不条理を克服するまでの道筋を論考する。
- 松下幸之助(1894‐1989)
- 実業家。パナソニックの創業者。
5月25日(土)14:00-17:00
第2回シュムペーター、ドラッカー、岩井克人の系譜と企業不祥事
市場主義・契約主義に立脚する米国流の株主主権論において、顧客の無理な要求はコスト高につながり、市場原理に従って淘汰される。一方、系列・関係性を重視する日本的経営は組織的対応力で乗り切ろうとするゆえに、対応の限界に達すると、改ざんや隠蔽のリスクが発生する。株主主権論批判の立場から、求められる経営哲学について思考を深める。
- ヨーゼフ・シュムペーター(1883‐1950)
- 経済学者。イノベーション理論を確立。
- ピーター・ドラッカー(1909‐2005)
- 経営学者。マネジメントの発明者と評される。
- 岩井 克人(1947 -)
- 経済学者。代表的な著書『貨幣論』(筑摩書房)など。
6月8日(土)14:00-17:00
第3回小林秀雄、山本七平、丸山眞男が見抜いた日本人の弱点
小林秀雄の「大和心」は日本人の魅力を伝えてはいるが、婉曲的表現ゆえに本質が裏面に隠されてしまう。山本七平は、「空気の支配」という日本的な意思決定の陥穽を明らかにした。丸山眞男は、「タコツボ型」と比喩して極端な個別化の傾向を指摘した。彼らの論考から日本人が抱える「価値判断の苦手意識」を考える。
- 小林 秀雄(1902‐1983)
- 評論家。文学、音楽、美術、歴史にわたる文明批評を展開。
- 山本 七平(1921-1991)
- 評論家。「日本人とは何か」を一貫して独自の視点から探求。
- 丸山 眞男(1914-1996)
- 思想史家・政治学者。日本の近世思想から独自の思想史の方法論を確立。
6月22日(土)14:00-17:00
第4回渋沢栄一の『論語と算盤』
渋沢栄一は著書『論語と算盤』で、「道徳と経済(ビジネス)は両立する」と主張した。そして、彼の考えるよい経営、理想的経営者はそれができていると説いた。渋沢栄一の思想を通して、哲学と経営の一元論の妥当性について議論する。
- 渋沢 栄一(1840-1931)
- 実業家。約500社の設立・創設に関与し、日本資本主義の父と言われる。
7月6日(土)14:00-17:00
第5回福澤諭吉の相対的価値判断論
福澤諭吉は、西洋合理主義の啓蒙者と言われるが、実際はあくまでも明治の日本の状況ではそれが有効な手段に過ぎなかったという立場にある。したがって、もし平成の世に福澤が生きていれば異なる判断をしたかもしれない。価値判断は絶対的・一元的なものではなく、環境によって変化する相対的・多元的なものであることを理解する。
- 福澤諭吉(1835-1901)
- 啓蒙思想家・教育者。慶應義塾の創設者。
7月20日(土)14:00-17:00
第6回ポパーの階層的進化論
ポパーは、経済合理性と哲学(価値判断)は並列的位置で考えると両立しないが、哲学が経済合理性を制御しながら進化・発展すると考えると、2つは両立し得ると考えた。ポパーの階層的進化論を通じて、セルフガバナンスとしての「経営哲学」の意義を議論する。
- カール・ライムント・ポパー(1902-1994)
- イギリスの哲学者、科学哲学の大家。
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